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アニメ(業界)の「トリクルダウン効果」は本当か?

アニメ(業界)の「トリクルダウン効果」は本当か?

※トリクルダウン効果(Trickle Down Effect);徐々に[ジワジワと]広まる[浸透する]効果の事

アニメはコロナ渦時代にも関わらず、以前に増して収益をあげていますが、労働者全体はどの程度トリクルダウン効果を感じているのでしょうか?
ウォルト・ディズニー・ジャパン社で日本のオリジナルコンテンツ制作部門のエグゼクティブ・ディレクターを務める成田 岳氏は、先日、The Hollywood Reporter社とのインタビューで、「一部の人が潤っているのではなく、現場のアーティストがちゃんと稼ぎ始めている 」と主張しました。

これは、正確には、どの程度本当なのでしょう? この質問に答えるための最初の問題は、アニメ業界は標準的な賃金を支払っていないということです。予算の分配を交渉するのは個々の制作スタジオに任されており
また、個人として何らかの仕事を請け負う場合も、契約金等を交渉するのは、それぞれの個人に任されています。
これは、フリーランサーや外注スタジオ(海外に拠点を置くことが多く、日本のスタジオよりも平均賃金が低い)に大きく依存するこの業界では、賃上げが外部からの圧力ではなく、交渉力に大きく依存することを意味します。

現在、この業界で活躍している関係者に話を聞くと、様々な意見があるようです。おそらく最も近い答えは、”予算とスケジュールの状態によっては、プロジェクトによってはもっと(賃金、契約金を)高く交渉できるアーティストもいる “ということでしょう。

具体的な話に入る前に、ひとつだけ確かなことは、アニメの制作予算は過去10年間で劇的に上昇しているということです。ANN(Anime News Network)のChris Macdonald氏によると、A級作品の北米でのライセンス料は1話あたり25万ドル(3325万円 ※1ドル133円換算)でこれは多くのシリーズの制作費とほぼ同じですが、高予算のアニメでは1話の制作費が50万ドル(6650万円)になることもあるといいます。メディア開発綜研(株)によると、2010年のテレビアニメの平均的なの制作費は1話あたり約14万ドル(1862万円)でした。

Netflixがアニメ産業に本腰を入れた際、これで全体的に条件が良くなるのではと話題になりましたが、業界関係者によるとそうでもないらしいのです。
『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』のキャラクターデザインを担当した西位 輝実(にしい てるみ)氏は、2020年に「予算は他のアニメの2倍、3倍になるかもしれない」と発言しましたが、アニメーターの賃金はそれに応じて上がってはいません。
昨年、アニメーターの一居 一平氏は、MAPPAで制作されたNetflixのアニメプロジェクトが1カットあたり3,800円で提示された事を明らかにしましたが、TVシリーズの平均レートは3,800~7,000円であり、このプロジェクトは最も低いほうに位置づけられるといいます。

数日後、MAPPAは、クリエイターを強制したことはなく、支払い率はケースバイケースで決定しているとの声明を発表しました。つまり、誰が負担するかにかかわらず、乱高下する予算を配分するための体系的な基準がないことが、ここでも問題なのです。

同じことがディズニー出資のアニメにも言えます。NPO法人アニメーター支援機構を主宰する菅原 潤(すがわら じゅん)氏によると、彼が話を聞いた『スター・ウォーズ:ビジョンズ』のジュニア・アニメーターは、1フレーム250円だったといいます。これは非常に低い金額で、一般的な(日本アニメの)ものと変わらないとのことでした。

菅原氏によれば、近年の日本全体の働き方改革政策により、アニメ予算のインフレの恩恵を最も受けているのは管理職であるとのことです。「このため、制作進行のような正社員として採用される職種の待遇は確かに向上している。」といいます。「しかしアニメーターの多くは契約社員として雇用されているため、この働き方改革の恩恵を受けることができないのです。」

しかし、このような批判があるにもかかわらず、現場の誰もメリットを感じていないわけではありませんし、単に経営陣がすべての利益を懐に収めているわけでもありません。業界アナリストの数土 直志(すど ただし)氏によると、アニメスタジオはこれまで以上に高い予算を必要としており、それには複数の理由があると言います。
業界の問題意識が高まっているため、スタジオはトレーニングや仕事の流れのデジタル化にもっと予算を割こうとしている事。また、スタジオのリソースが不足している場合でも、需要に見合うだけのアニメを制作しなければならないというプレッシャーから、リテイクや外注のコストが上昇する事。しかもそれが短期間で行われなければならない場合は、なおさらコストが上昇する事。これらの理由です。

東京経済(株)の取材に応じた匿名の業界関係者によると、経営や会計がうまくいっていないことが原因だといいます。「多くの経営者は貸借対照表を読むことができず、会社の現金の出入りを追跡することもできず、内部留保資金の重要性を理解せず、ある月の給料から次の月の給料をもらって生活することだけを心配している」と彼らは主張します。
「そのため、資金不足に陥ると、スタジオの出来うる能力を超えることを始めから承知の上で、前金を受け取りたいがゆえに新しいアニメの企画を引き受ける。結果、制作現場でトラブルが発生し、現場は混乱する。アニメ業界の労働問題の根本は、経営者の計画性、財務体質の改善能力の欠如にある。」と言います。

多くのスタジオにとって、これは実に厳しい状況を示しています。(株)帝国データバンクは、2020年にアニメ制作会社の37.7%が赤字だったと報告しています。西位 輝実氏は、このような状況におけるNetflixの制作予算を砂漠の雨に例えて、「砂に飲み込まれ、植物を育てるほどの量にはならない 」と語りました。

では、誰が儲かるのか?

冒頭近くにも書きましたが、予算やスケジュールの状況によっては、プロジェクトによってはもっと高く交渉可能なアーティストもいるという事です。では、そのようなアーティストとは、どのような人たちなのでしょうか?

数土 直志氏によれば、変化は人手不足の職種に最も集中し、アニメーターによってその環境はさまざまだといいます。大手スタジオの社員として働く初級アニメーターの労働環境は劇的に改善されましたが、こうした労働条件の格差を解消することが今後の大きな課題だそうです。

アニメの過剰生産が叫ばれる中、アニメーターはますます貴重な労働力となっています。フリーランスの翻訳者でありプロダクション・コーディネーターのFAR(『ワンダーエッグ・プライオリティ』への貢献で紹介)は、プロダクション・マネージャーは、人材確保のためにこれまで以上に(人材の)網を広げる必要性に迫られていると語ります。

「(アニメ制作会社の経営者達は)現状、(制作過多等で)極めてのっぴきならない状態で、しかも交渉や資金繰りの経験も乏しいため、単価交渉ではアニメーターが優位に立つことが多くなっています。」

(FARの)知人が、今度やるアニメの演出で、通常の3倍の単価を要求し、交渉できたと言います。交渉時、最初提示される低条件を拒否するには、機転と意志の強さが求められます。しかし、自分の価値を知っている熟練したアーティストは、自分の立場を貫くことができるはずです。

そうは言うものの同時に、個々のアニメーターに予算の分配を交渉する責任を負わせるべきではありません。そのようなシステムでは、仮にお金があるとしても、資金力のある人たちが、全体的な基準を引き上げるよりも、個別の例外を設け(交渉上手な特定の個人のみ賃金等を引き上げ)る方がいいと判断していることを意味するので、不満が残るのです。

予算が上がっても、(予算の分配が公平に低賃金労働者層まで行き届く事に)誰も責任を取らないのでは、業界の低賃金労働者への「トリクルダウン」は起きません。標準賃金が上がるためには、アニメの資金調達を担当する製作委員会が、人件費の重要性を前もって理解し、それを考慮することが必要です。

こういう話を読むと悲観論に陥りがちですが、明るい材料は、内部で改革を主張する人たちがいることです。この問題に対する国際的な認識が高まっていることが、こうした密室での交渉の要因にもなっています。ファンとして協力したいのであれば、情報を共有し、アニメーター支援機構のような取り組みを強化することをお勧めします。労働者自身の声を聞き、要請があれば支援してください。



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