すでに『かぐや様は告らせたい』3期がこれだけ愛されているのだから、振り返りも面白くなりそうです。
このレビューで、シリーズを全て見た者の視点から、もう一度エピソード毎に見直してみることにしましょう。
『かぐや様は告らせたい』3期 概要
『Kaguya sama Love is War』 Season3 または『かぐや様は告らせたい 』3期は、赤坂 アカ氏による同名のマンガを原作とする恋愛、コメディ、心理戦(本当に)アニメです。
2019年に1期、2020年に2期がそれぞれ放送され、本シリーズはそれらの直接の続編となります。
アニメの制作は、『かぐや様』の両方の前シーズンと並んで、『86-エイティシックス-』や『僕だけがいない街』など、この時代に最も高く評価されているアニメのいくつかを担当しているA-1 Picturesが担当しています。
監督は前作に続き小俣 真一(クレジット表記:畠山 守)氏。今シーズンは、そのキャッチフレーズから『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』と称されました。全シリーズのレビューはこちら!
ーー 『かぐや様は告らせたい』3期レビューにはネタバレが含まれません。 ーー
『かぐや様は告らせたい』3期 プロット
『かぐや様』の今シーズンが素晴らしいものでなかったという感想、コメント、発言がもしあったとすれば、それは神への冒涜に他なりません。
すべてのアニメの中で、最もよく書かれ、タイトに演出された日常系アニメの一つでした。2つのシーズンを通して、数年にわたり積み上げてきた物語を、誰もが想像する以上に満足のいく形で提供することができました。
しかし、では『かぐや様』は史上最高のアニメになるには十分だったのでしょうか? 絶対に違うと思われます。
このシーズンに対する皆様の見方には、多くのリーセンシーバイアス(※)があります。最後の6つのエピソードは驚異的で、それについて疑う余地はありません。
しかし、その前の6つのエピソードは、ほとんど何も起こりませんでした。それらは話的に一貫性がなく、前シーズンまでに確立されたクオリティより低いと言わざるを得ませんでした。
もちろん、それでも良いエピソードであり、確かに面白くはありましたが、今シーズンは良いスタートを切ったと言えるほどのエピソード達ではなかったのです。
※)リーセンシーバイアス(recency bias):歴史的なイベントよりも最近のイベントを優先する認知バイアスの事(Wikiより)
3期は後半になるにつれて、驚くほど一つの方向へ向かい最終話へ突き進んでゆきましたが、当初は方向性が定まらない感じでした。早坂が御行に言い寄ろうとする小編は不快で、このシーズンが確立しようとした他のすべてのものと直感的に反していました。
また、この事は早坂のキャラクターにもダメージを与え、それ以来、彼女は回復していません。この後のエピソードでは、以前のヒット作が完成させたコンセプトに則った、最高のヒット作のエピソードの数々を披露してくれました。
その中には渚のエピソードや、ラップをベースにした、まだあまりに奇妙で未だに正しく理解することができないラップ回エピソードも含まれていました。それらは今シーズンのベストエピソードだったのでしょうか、それともワーストエピソードだったのでしょうか?
しかし、特に何も起こらなかった後に、このアニメは6つのエピソードに着手し、アニメ史上最高の学園祭編へと発展していったのです。日常系というジャンルの定番である日本の学園祭は、通常、多くの恋愛、歌、踊り、そして気分を高揚させる全般的に喜びのトーンを意味するものです。
しかし、今回は、それ以上のものを意味していました。それは、主人公たちの何年にもわたる憧れ、恋、そしてそれを互いに最初に相手よりも先に認めないという戦いの集大成だったのです。そして実際起った事を表現するのに、”栄光”という言葉を使うとしたら、それはあまりにも小さい言葉でしょう。
ロマンス、ホラー、コメディ、シュールレアリスム、フラッシュバックなど、ハチャメチャなドミノ倒しのように、あらゆる要素を盛り込みながら、10人以上の異なるキャラクターがバランスよく登場するこのシーズンの終盤は、何ヶ月も前から計画された緻密な詳細さで全体が飾られていました。
そしてこれこそが、このシリーズを、多くの人がこの作品を史上最高のシリーズと言ってしまうほどに押し上げたレベルで、本当に素晴らしいものでありました。このアニメがこの最終エピソードだけで構成されていれば、そう思う人さえいるでしょう。しかし、最初の6つのエピソードが、若干クオリティを下げているのです。
『かぐや様は告らせたい』3期 キャラクター
プロットと同様に、今シーズンのキャラクター展開も、後半に重厚なクオリティアップを遂げました。前半は、前シーズンまでで、見たことのある物のほとんどが登場し、それは私たちに多くのことを思い出させるのに適したものでした。
早坂は、最初の3話で、御行を口説くという実現不可能な事をする羽目になり、冷酷で残酷な性格で登場し、結果、キャラクターとして徹底的に破壊されました。その試みも決して面白いものではなく、その過程で信じられないほど不誠実で寄生虫のような印象を与えてしまいました。
いつもの”嫌疑をかけられる”事が登場しました。渚とその忘れられたボーイフレンドは、かぐやの遠縁者(四条 眞妃)と並んで、きちんとした見せ場を作りました。四条 眞妃は非常に面白い新キャラクターで、登場する場面がしばしば見られました。また、優と伊井野も登場し、伊井野よりも優の方が輝く時間を多く持っていました。
『かぐや様』3期では、千花の役割が極端に減り、ほとんど背景の雑音とお笑い担当に追いやられました。これは幸でもあり不幸でもあります。と言うのも、千花は面白いキャラではありますが、彼女の出番が多すぎるとすぐに飽きてしまうからです。
このアニメの主役は、いつものように、御行とかぐやでした。このシーズン全体は、御行がかぐやにふさわしい人物であることを証明する事、一方、かぐやはそもそも誰かを好きになることに対しての気持ちと格闘する事、で成り立っていました。
2人はこれまでにないほど親密になりましたが、シリーズ開始当初からの課題である「どちらも先に告白するという敗者にはなりたくない」という気持ちは変わらずにありました。この特別な編(学園祭編)の結末は常に大きなものにしなければならないはずでしたが、このアニメは、それをものの見事に処理し、2人の個性を引き立たせました。
『かぐや様は告らせたい』3期 アートと音楽
アニメーションは常にこの作品の高いポイントであり、今回も新鮮さを保つために非常に良い仕事をしています。1つのエピソードに複数の実験的試みとアニメーションのスタイルが使用されており、これがスローな日常生活の部分でも作品のテンポの良さを維持することにつながっています。
作品はカラフルで信じられないほどスタイリッシュで、キャラクターデザインは相変わらずしっかりしています。また、それらは作品のコメディ要素に大きく貢献しており、このシーズンを見ていると、絶対に楽しい気分になります。
同様に、音楽も、アニメーションほど目立たなかったものの、しっかりしたものでした。どちらかというと、音楽はアニメーションよりも実験的で、ラップのエピソードがまるごとこの作品の名作壁に飾られているようなものでした。
ラップ回の音楽は、個人的にどの程度、快・不快に感じるかによって、”ドン引きする”とも”面白い、笑える”とも言えますが、その背後にある努力は非常に明白で、このアニメをこの世代で最も努力した作品の一つにしている一因となっています。『かぐや様は告らせたい』4期は必要なものです。
まとめ
『かぐや様は告らせたい』3期は、史上最高のアニメとまでは言えないかもしれませんが、非常に近いものがありました。プロット、アニメーション、キャラクター、テンポの良さなど、このジャンルでは最高の出来であり、それらが評価されるのは素晴らしいことです。