『黒の召喚士』第5話では、ケルヴィンが異国情緒あふれる新キャラクターをパーティに迎え入れ、あらゆることに新鮮な視点を与えてくれます。
ーー 注意 ーー
以下は、Crunchyrollで配信中の『黒の召喚士』第5話「魔王の娘」のネタバレを含みます。
『黒の召喚士』は、2022年夏を代表するスタイリッシュな異世界アニメで、ケルヴィンという強力な召喚士を主役としてます。
彼は、5話という短い時間の中で、常に自分の思い通りになり、レベルもどんどん上がっていく、温厚なパワーファンタジーのキャラクターとしての地位を確立しています。
しかし、彼のパーティメンバーは別問題です。
『黒の召喚士』の面白さは、ケルヴィン自身ではなく、彼が勧誘する人々や生き物にあります。陽気なブルースライムのクロト、堂々とした騎士ジェラール、魅力的なエルフの少女エフィルなどです。
第5話ではパーティメンバーにセラが加わり、このありがちな異世界冒険記に新鮮な世界観をもたらしています。このアニメにはこれが必要だったのです。
『黒の召喚士』第5話では、主人公ケルヴィンが強大な悪魔の戦士ビクトールと戦います。両者の戦いは拮抗していましたが、ついにケルヴィン一行が優勢になり、ビクトールを倒しました。
床に倒れ、ゆっくりと死んでいくビクトール。この時、ビクトールは、自分の本当の動機を説明しました。それは、魔王の一人娘であるセラを守る事であると。そしてセラを次の魔王、いや女王にする事だと。
セラが魔王になった時は平和な世界になっているはずなので、誰も彼女に逆らうものはいないはずだとビクトールは言います。
ビクトールの最期の言葉の最中にフラッシュバックがあり、そこでは幼いセラと一緒に訓練をする姿や、セラの後見人及び師匠として彼女を献身的に世話をするビクトールの姿など、心温まるシーンが流れます。
ビクトールには明らかに善意が感じられたため、ケルヴィンはセラを呪縛から解き放ち、面倒を見ることを約束します。これを聞いた、ビクトールは満足そうに息を引き取り、セラは目を覚まします。
魔王の娘でありながら、セラは傲慢な姫デレでもなく、特に自分に自信があるわけでもありません。父とヴィクトールの死を悲しんで泣き、その後、召喚される存在としてケルヴィンのパーティに喜んで参加することになります。
しかし、セラは世界のことや世界がどう回っているのか全く知らず、悪い事に、もし彼女の正体がバレると誰も彼女を受け入れてくれない事は確実です。 つまりセラは、世界を恐れる十分すぎる理由があるのです。
しかし、意外なことに、セラはこの世界を探検し、そのすべてを知ろうと決心します。
これまで世界と隔離され孤独に生きてきたセラは、失われた時間を取り戻そうと決意します。それは、全てのものが手に入れるべきものとなった少女としての勇気と好奇心の証明であり、見ていて心地よいものです。
彼女は生まれて初めて自分の人生の主導権を握り、新しいことを学び、幸せを掴み、自立した若者になることでビクトールと父親に恩返しができるのです。それは、父親なら、魔王であろうとなかろうと、誰しもが子どもに望むことでしょう。
セラの無限の好奇心と熱意は、単にメインキャストに健全なキャラクターを加えるだけでなく、『黒の召喚士』にとっても大きな意味を持ちます。元々隔離され生きてきた彼女の視点は新鮮な事に加え、彼女にはケルヴィンよりも探検家気質があるのです。
ケルヴィンは異世界の主人公とはいえ、かなりオーソドックスな考え方で、何事もそれが当然であるように考えています。転生前の記憶がないにもかかわらず、好奇心や冒険心があまりないように見えるので、視聴者は彼の目を通して世界を知ることはできません。
しかし、幸いな事に、セラがその役割を担ってくれるが如く、良い時期に登場しました。
その性質上、異世界モノは冒険、新しさ、無限の可能性がすべてです。これを利用する異世界ヒーローもいれば、利用しない異世界ヒーローもいます。
例えば、『転生賢者の異世界ライフ 〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜』のユージは究極の食事を求めて大地を駆け巡り、『本好きの下剋上』のマインは、大地を駆け巡るよりも本を作ることに夢中になっています。
『黒の召喚士』では、セラの目を通して、その世界観が新鮮でエキサイティングに感じられるようになりました。セラがいれば、ケルビンが付き添いつつも、ぶらぶらと新しいものを見に行くかもしれません。
世界は広いです。でもセラがいるので、今後アニメにおいて、どんな岩の下も、どんな隅も覗いて、そこに何があるのか確かめるはずです。
たとえセラがいわゆる(こっちの世界での)ハチの巣を蹴るようなことになったとしても、それはセラにとっても、視聴者にとっても価値のあることなのです。