サラサは、大好きな師匠から遠く離れた村で、自分一人しかいないと思っていました。しかし、錬金術の店を作るには、村の助けが必要なのです。
ーー 注意 ーー
以下、HIDIVEで配信中の『新米錬金術師の店舗経営』第2話のネタバレを含みます。
『新米錬金術師の店舗経営』は、初心者の錬金術師である若きヒロイン、サラサ・フィードを主役とした2022年秋季のどことなく異世界系によく似たファンタジーアニメです。
サラサは錬金術店を成功させ、地域のみんなの役に立ちたいと考えていますが、言うは易く行うは難しで、所有の豊富な蔵書はともかく、サラサはゼロからのスタートとなります。
第1話では、根性がありながらいつも何か不安を抱えている少女サラサを、おおらかで努力家だけどどこか頼りなさげな人物として描いていました。一方、第2話では、サラサが新天地で生活を始めてからの数日間が描かれました。
彼女の新天地は、そこで暮らす者は全員お互いが知り合いという田舎町で、サラサだけがよそ者のようでした。しかし、友情の絆はすぐそこにあったのです。
第2話では、サラサはこの新しい町で、まったく自分の居場所がないことを自覚していました。友人も知人もおらず、王都に戻るにはあまりに長い道のり。彼女は目下のところ一人で生きていかなければならないのに、空っぽの錬金屋に家具を調達する事さえできません。
また、サラサはこの地の人々に、彼女が田舎者を見下した気取った都会人だと拒絶されることを恐れていました。しかし、嬉しいことに、ある地元の少女は彼女を何の躊躇もなく温かく迎えてくれました。
ロレアというその女の子は、サラサが活気のある都会からやってきたことに興奮隠し切れない様子です。どうやら都会の生活に興味津々なようです。二人の女の子は友達として意気投合し、結果、ロレアはサラサの最初のヘルパー兼ガイドとなります。
更に、ロレアはサラサが経営する錬金術の店にとって初の従業員となることになります。サラサにとって明らかに手助けが必要だったので、渡りに船でした。サラサは優れたスキル持ちですが、一人で何でもできるわけではありません。
早くも、サラサの新しいビジネスライフに友情の力が根付いてきたかと思いきや、そうは問屋が卸しません。今のところ、大工や鍛冶屋を雇う資金もなく、酒場では村人からからかわれる始末。その夜、サラサは結局、この町には自分の居場所がないのだと思い込んで、元気をなくして寝込んでしまいました。
しかし、ロレアがサラサの代わりに村人たちに話をし、彼女を助けてやってほしいと説得したところ、風向きが良いほうへ変わります。村人たちは悪い人たちではなく、サラサが新しい隣人であることにまだ慣れていないだけで、からかったのも、サラサの繊細さを村人たちが知らなかっただけなのでした。
村人たちは悪意は全く無く、ほどなくサラサと仲直りしました。
第2話の最後には、村人たちが総出でサラサの店を家具も含めて無償で改装してくれることになり、サラサにとって最高なものになりました。彼女は、村人たちに感謝し過ぎても足りない気持ちになりながらも、小さな町の本当の姿を知ることになります。
この町には、大都市のような巨大な経済力や莫大なビジネスチャンスはないものの、その分、町民が互いに気を配りながら、仲間を大切にするコミュニティが形成されています。この辺りでは、子供を育てるにも、いや、むしろ錬金術師を育てるにも村が丸々必要で、まさに友情の絆の力が光っているのです。
サラサは、これからもそれを期待していいのかもしれません。
面白いことに、『新米錬金術師の店舗経営』は異世界アニメ作品ではありませんが、『本好きの下剋上』や『Dr.Stone』のような異世界アニメの雰囲気を持っています。異世界アニメ系の中には、チート級の能力持ちの俺TUEEEの冒険譚ではなく、新たな舞台での友情の力を描いたものもあるのです。
サラサが王都からこの辺鄙な町まで旅をするのは、ほとんど異世界の冒険のようなもので、サラサは夢と目標以外はほとんど何も持っていない状態で、まさに場違いな感じでした。
『本好きの下剋上』や『転生したらスライムだった件』のような健全な異世界系では、主人公が力を発揮するのは自分のチート能力ではなく、周りのコミュニティーのおかげなのです。みんなの力を合わせることが、人々の生活をより良いものに変えていくのです。
しかし、『新米錬金術師の店舗経営』は、友情の力だけでなく、友達を作る力という、全く別の力が必要な作品です。『FAIRY TAIL』の主人公たちは、お互いを守ることで力を発揮しますが、これはこれで一つの力です。一方、内気な新参者サラサが、新しい隣人と繋がり、村社会のような元からある固い絆のあるコミュニティに新たに加わるには、大変な勇気と覚悟が必要なのです。
慣れない土地に引っ越してきて、どうにかして友達を作らないといけないという状況とその時の気持ちは、視聴者にも伝わりやすいのではないでしょうか。魔法使いのギルドで戦うというのは純粋にフィクションですが、サラサ・フィードがやっていることはファンにとってもあまりにもリアルであり、それが彼女の旅をより感動的なものにしているのです。