戦闘スタイルは似ていますが、アレクシア姫は凡人の剣としてのシドとは、剣術に対する考え方が大きく異なります。
ーー 注意 ーー
以下は、HIDIVEで配信中の『陰の実力者になりたくて!』1期のネタバレを含みます。
『陰の実力者になりたくて!』におけるシド・カゲノーと王女アレクシア・ミドガルとのダイナミックでありそうもないパートナーシップは、ディアボロス教団との不幸な出会いを含め、多くの刺激的で劇的な出来事を引き起こしました。
しかし、対照的な二人を結びつけているのは、平凡を極める剣術のスタイルです。
基本的な戦い方に誇りを持つシドに対し、アレクシアはその実用性にはかなり否定的な意見を持っています。では、アレクシアの剣術に対する不信感や、第5話「アイ・アム……」での突然の心変わりは、どうしてなのでしょう?
自己嫌悪の姫君
第3話「凡人の剣」では、高慢で厭世的なミドガル王国第二王女アレクシアが、学園で人気の氷の女王として登場します。
友人たちとの賭けに敗れたシドは、振られること前提でアレクシアに告白しますが、二人は意外な協力関係を結び、シドの普段の「目立つ事は出来るだけ回避」ルールに反した偽りの交際をすることになります。
相互に利益のある取り決めでもあり、それとは別に互いの剣術のスタイルには尊敬の念を抱いていました。そのスタイルとは、基本動作の積み重ねの末、これを完璧に仕上げつつ、かつ驚くほど平易にしたものです。
しかし、剣術に対する考え方の違いから、二人の間に対立が生じ、そのせいで不幸な出来事が次々と起こることになります。
ある日、偽装カップルとしてミドガル王国魔剣士学園に戻る途中、シドがアレクシアに彼女の剣術が好きだと言うと、彼女はかつて姉のアイリス・ミドガル王女も同じことを言っていたと苦々しげに答えます。
アレクシアは、ミッドガルで最強と謳われ、いくら努力しても追いつけない姉の剣技に、ずっと近づきたいと思っていたのだと説明します。
苦労して鍛えた剣術は、周囲から「凡人の剣」というあだ名で陰口を叩かれるほど平凡に思われていました。姉から平凡な剣だから良いのだと言われると、アレクシアは優越コンプレックスから惨めになり、自分に対しても姉に対しても怒りを覚えるのでした。
それ以来、姉妹の関係はぎくしゃくし、アレクシアはアイリスを避け、スパーリングをするたびに自己嫌悪に陥っていました。
彼女の情熱に再び火をつける
第5話「アイ・アム……」の誘拐事件で、アレクシアは隣の独房にいた謎の白髪の怪人の助けを借りて監禁場所から脱出しますが、彼女の婚約者候補でディアボロス教団のナイツ・オブ・ラウンズ入りを目指すゼノンと戦う事になり、そこで彼に圧倒されます。
戦いの中でゼノンは、剣の腕と力に劣るアレクシアに対し、不安を煽り、姉のアイリスと比較して彼女を嘲弄しながら、アレクシアを瀬戸際まで追い詰めます。
しかし、アレクシアが希望を失いかけた時、シャドウガーデンのリーダーであるシャドウに扮したシドが間に割って入り、ゼノンにどちらが強いか決闘を申し込みます。
対決の最中、ゼノンはディアボロス教団が開発した薬を飲み肉体強化したにもかかわらず、シャドウはゼノンを簡単に圧倒してしまいます。アレクシアは、シャドウの剣術が平凡なスタイルであることに気づきます。ただしそれは完璧に研ぎ澄まされた基本の動きを核としながら、超越の域に達したものでした。
このことでアレクシアは、若いころに夢見た到達すべき理想の剣術を思い出します。シャドウの動きを見ながら彼女の脳裏をよぎったのは、自分が鍛え、愛した基本技の集積にほかなりませんでした。こうしてアレクシアは、情熱を取り戻し、自己嫌悪で失っていた剣への信頼を築き上げ直したのでした。
一度は平凡な剣術を信じられなくなったアレクシア姫でしたが、シャドウによって、知らず知らずのうちにゼノンからも自己嫌悪からも救われていました。再び自分の剣術を愛するようになったアレクシアは、妹のアイリスと和解し、自分の心根に安らぎを見出すことができました。
しかしながら、彼女は、シャドウの正体とシャドウガーデンの目的について多くの疑問を抱くことになるのでした。