MAPPAのアニメーションの微妙なトリックは、お気に入りのキャラクターの安否に関して、押しキャラは安全だと、ファンに間違った安心感を与えているかもしれません。
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以下、Viz Media.より発売中の藤本 タツキ(ふじもと タツキ)著『チェンソーマン』 第77章「チャイムチャイムチャイム」、芥見 下々(あくたみ げげ)著『呪術廻戦』 第120章「渋谷事変 その38」のネタバレが含まれます。
アニメ制作スタジオMAPPAは、『呪術廻戦』、『進撃の巨人』第4期、そして最近アニメ化された『チェンソーマン』など、今日最も人気のある作品のアニメ制作を担当しています。
このスタジオは、高品質のアニメーションと細部へのこだわりで有名で、『劇場版 呪術廻戦 0』の監督は、制作チームに、五条 悟(ごじょう さとる)のまつ毛や唇が過剰にならないように注文するほど、そこまで詳細にこだわります。
しかし、このスタジオは視聴者に魅力的なアニメーションを提供するだけでなく、これらの作品の意外性を掘り下げ、(原作を知らない)アニメ勢の心を揺さぶるような方法をとっているのです。
特に『呪術廻戦』や『チェンソーマン』では、細部にまで工夫が凝らされ、ファンにとって自分の押しキャラの安全性について安心できる作りとなっています。
冒頭のシークエンス、アニメ版での原作からのちょっとした変更、特定のキャラクターへのフォーカスなど、様々な工夫を凝らし、MAPPAは視聴者に安心感を与えます。これは後に、より衝撃的な瞬間を提供するために行っているのです。
MAPPAは、キャラクターに関する「おとり」を取り入れています。
MAPPAはこれまで『呪術廻戦』のアニメ化において、非常にスマートな演出を行ってきました。例えば、アニメのオープニングに、明るい未来を持っていないキャラクター(要するに、後で死ぬキャラ)を登場させました。
その最たるものが、虎杖 悠仁(いたどり ゆうじ)がごく短期間で友情を育んだ吉野 順平(よしの じゅんぺい)です。アニメの最初のオープニングでは、順平が虎杖、釘崎 野薔薇(くぎさき のばら)、伏黒 恵(ふしぐろ めぐみ)らと、呪術高専の制服を着て社交的に話すシーンがたくさん出てきます。
順平が(メインキャラ3人と)オープニングに登場することで、彼のアニメ内での位置づけが(メインキャラと同等と)理解できるようになるはずです。しかしそれは、つかの間でした。
順平は敵役の真人(まひと)に絡め取られてしまいますが、オープニングで順平が登場したことで、主人公の虎杖 悠仁が順平を救ってくれるものと誰もが思っていました。しかし、その予想は見事に裏切られ、順平と真人はなんやかんやで意気投合したのもつかの間、真人は驚く虎杖の目の前で順平を容赦なく殺してしまいます。
本編の前日譚となる『劇場版 呪術廻戦 0』では、皆が好きなあの七海 建人(ななみ けんと)が意外な姿で登場します。夏油 傑(げとう すぐる)による「百鬼夜行」では、呪術師たちが数千の呪いを相手に無慈悲な戦いを繰り広げていましたが、原作では、七海はこの戦いに参加していませんでした。
しかし、映画では、親友の猪野 琢真(いの たくま)を助けるシーンがあり、その時に少しだけ登場しました。これは、七海が4回連続で黒閃を放つことの説明として使われる絶好のチャンスでしたが、MAPPAはそうしませんでした。
これは、MAPPAが再び、七海が実際の彼よりもずっと大きなキャラクターであるとファンに信じ込ませている事を示しています。現実は、虎杖の師匠としての彼の役割は短く、「渋谷」編では弟子の目の前でこの呪術師も真人に殺されてしまいます。
MAPPAは『チェンソーマン』のアキに不吉な光を当てている
もし、ファンに好まれるキャラクターのタイプが一つあるとすれば、それは、気乗りはしないが無謀な部下の面倒を見なければならなくなり、最終的には家族として迎え入れることになる、師匠タイプのキャラです。 『チェンソーマン』におけるこの好かれキャラこそ、アキで、彼はアニメ内でそれにふさわしい役を演じています。
しかし、MAPPAがこのキャラクターに与えるスポットライトは、何か不吉な感じがするのです。スタジオはすでにオープニングで作中でこれから起きる悲劇を予感させているので、またファンの目をごまかしに来ていると考えても、決して的外れとは言えないでしょう。
これまでMAPPAは、アキの静かな朝の日常、家での生活、そして子供っぽいデンジとパワーを保護者のように世話する様子などをファンに紹介してきました。彼の不機嫌そうで無愛想な性格は、『進撃の巨人』のリヴァイ・アッカーマンや『鬼滅の刃』の富岡 義勇のような他のアニメの人気キャラクターと似ていて、ファンの心をくすぐります。
しかし、これらのキャラクターとは異なり、早川 アキはアニメが終了する頃には存在していません。マンガでは、アキは「銃の悪魔」に殺され、「銃の魔人」と化し、最後はデンジ自身に息の根を止められます。
MAPPAはアキに特別な配慮をしているように見えますが、これは『呪術廻戦』の七海のように、ファンにキャラクターへの好感度をさらに上げさせ、最終的に彼らが倒れたときにスタジオがナイフをねじ込むためのサディスティックな策略なのです。
MAPPAは息を呑むようなアニメーションで優れているだけでなく、アニメの体験をますます夢中にさせ、さらに感情的なものにしています。このスタジオの細部へのこだわりと、自分たちの関わるどの作品にも精通していることに加え、ジャンルの予想を覆す2つの少年マンガのストーリーが、究極の心理的なひねりを生み出しているのです。