2022年は、いつもの異世界系やラブコメ系が多すぎた印象でしたが、アニメファンにとっては素晴らしいコンテンツを幅広く探すことができる堅実な1年でもありました。
2022年という年は、数字を見る限りでは、アニメにとって必ずしも素晴らしい年ではありませんでした。多くの作品が失敗し、飽き飽きしたサブジャンル、お約束ごと、決まり文句に逆戻りしてしまいました。
しかし、これは優れた作品がなかったことを意味するわけではありません。変わり映えしない異世界モノやちっとも面白くないラブコメは、もうお腹いっぱいでしたが、それを補って余りある作品が多数あり、アニメファンにとって有意義な1年だったと言えるでしょう。
期待される続編や有名どころにスポットライトを奪われそうなシーズンの中にあっても、それらに負けず、これから紹介する作品は、高品質で、思わず引き付けられるストーリー、魅力的なキャラクター、素晴らしいアニメーション、クリエイティブなセンスで、輝きを放ちました。
すぐにファンに支持された作品から隠れたヒット作まで、2022年はアニメがこれまでと変わらず、多様で芸術的、革新的であることを証明して見せました。
佳作
オールCGIで制作された『Blade Runner: Black Lotus』。アニメがこのような西洋のメジャーな作品に挑戦しても、オリジナルでビジュアル的に印象的な作品を作ることができるということを証明したのが本作です。
巧妙なアクションシーンとサスペンスフルなストーリーが特徴の『Black Lotus』は、『Blade Runner』に関する予備知識を必要としないため、おそらく最高の出来に仕上がっています。予備知識が要らないと言ったのは、既存の世界観をストーリーの支柱にすることなく、独自のストーリーを構築することに専念しているからです。
記事作成Christy Gibbs(以下CG)
少年アクションアニメ『鬼滅の刃』に待望の続編が登場。2022年に向けて、ファン待望の 遊郭編が描かれました。Ufotableのクオリティは相変わらずで、遊郭編での信じられないようなsakuga(作画)の瞬間、瞬間に浸み渡っています。
この遊郭編では、音柱、宇髄 天元も登場し、そのカラフルな性格は、特に「無限列車」の出来事の後、『鬼滅の刃』の厳しい世界と完璧に対比されています。
記事Anna Williams(AW)
豪華なアニメーションと独自の世界を舞台にしたオリジナルストーリーの『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は、1979年の『ガンダム』シリーズ開始当初からのファンだけでなく、新規のアニメファンにもわかりやすくなっています。17歳のスレッタがガンダム初の女性主人公となり、LGBTQ+(性的少数者)の表現がさりげなく織り込まれています。
記事Joe Ballard(JB)
『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』は、原作のライトノベルやそれを元にしたマンガが持つ魅力やユーモアを余すところなく取り込んでいます。異世界系や乙女ゲームインスパイア系の典型的なテイストを踏襲しながらも、本作は楽しいストーリーテリングと多彩なキャラクターで視聴者を飽きさせることがありません。
記事Miki Suzuki(MK)
10 『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』 第2部、第3部
『ジョジョの奇妙な冒険』(JJBA)は、放送・配信日の「ジョジョの金曜日」がジョジョファンに惜しまれるほど、毎回の新作がいかにハイテンションであるかは否定できません。3部構成の「JJBA 第6部 ストーンオーシャン」は、夏と秋のアニメシーズンを使って、空条 徐倫(くうじょう ジョリーン)一行の物語を完結させるものです。
デイヴィッドプロダクションは、ストーンオーシャンの最期を完璧に映像化し、安定したクオリティで感動を与え続けています。特に第3部は、多くの熱心なJJBAファンの間で傑作とされていますが、それには、もちろん理由があります。
このアニメ化は、ストーンオーシャンの人気キャストを完璧に再現しただけでなく、3部構成にもかかわらず、各エピソードが物語に対する真の作品愛と情熱を持って扱われていることが明らかです。もちろん、あのような結末になった以上、第7部『スティール・ボール・ラン』のアニメ化の可能性は、シリーズファンにとってこれまで以上に期待できるものです。
記事AW
9 『うる星やつら』
リブートというのは、媒体を問わず、賛否両論あるテーマです。しかし、『うる星やつら』(2022)は、リブートの正しいあり方を示す輝かしい例であり、クラシックな作品のリブートはどうあるべきかという基準にもなりました。本作は、デイヴィッドプロダクションが制作したもうひとつの作品で、1980年代のオリジナルアニメの雰囲気と魅力をそのままに、独自性も保っています。
バブリーなシティポップの美学、ラムと諸星という象徴的な役を演じる有能な声優陣、そして完璧で軽妙なユーモアセンスが、活かされています。
『うる星やつら』(2022年)には深遠なテーマはありません。ラブというよりコメディ寄りのこの作品は、アニメはただ楽しいだけでいいし、ファンもリラックスしてそれに乗っかればいいのだということを気づかせてくれます。
記事AW
8 『よふかしのうた』
コトヤマの同名原作を、カルト的人気を持つ『化物語』に関わった板村 智幸(いたむら ともゆき)氏が監督し、ライデンフィルムが制作した『よふかしのうた』は、従来の少年ラブコメの常識を覆し、夏アニメの季節に急浮上してきました。
ネオ東京の色彩と華麗なアニメーション、そしてCreepy Nutsによる楽しいオープニングとエンディングテーマで、『よふかしのうた』が静かな夏の季節の中でファンの人気を集めたのは当然のことです。
吸血鬼の仲間や他のキャストと比べて主人公の年齢が低いという批判は受けましたが、『よふかしのうた』は、ロマンチックな都会のナイトライフを最高の形で描くことに成功し、恋に落ちることについてのパワフルで、衝撃的なまでの進歩的メッセージを伝えています。
全体として、『よふかしのうた』は、日常的な快適空間から一歩踏み出して、夜に蠢くフクロウのように、ワイルドなスリルを味わいたいアニメファンにとって、最高の作品といえるでしょう。
記事AW
7 『賭ケグルイ双』(カケグルイツイン)
2017年に放送された『賭ケグルイ』は中毒的なギャンブラーを描いた作品ですが、多くのファンを獲得し、2年後には続編が放送されました。 意図的に大げさにされたストーリーテリングと自由奔放な滑稽さは、特にキャラクターの表情に多くのミーム(MEME:インターネット上で拡散されて流行る、ネタのようなもの)を生み出しました。
スピンオフの『賭ケグルイ双』はこの点で後続作品にふさわしく、本編の主人公が出演していないにもかかわらず、前作の中毒性のある不条理な面白さを維持することに成功しています。
『賭ケグルイ双』のすべてが本編と同じレベルの滑稽さに達しているわけではありませんが、この『賭ケグルイ』シリーズは、繊細さやリアリズムを捨てれば捨てるほど、より良く機能することは確かです。しかし、この作品の一番いい所は、トレードマークである彩度の高い色彩と、ミームになるにふさわしい顔のアップを含む、姉妹作品に匹敵する、荒唐無稽さであることは間違いないでしょう。
記事CG
6 『その着せ替え人形は恋をする』
毎年、どこからともなく現れ、突如として世界中の人々を魅了するヒットアニメが生まれますが、2022年冬に放送された『その着せ替え人形は恋をする』も、そういったアニメの一つです。雛人形作りが趣味の五条 新菜は、その事でクラスメイトにバカにされることを恐れて、いつも一人でいました。一方、もう一人の主人公、喜多川 海夢はコスプレに熱中しています。
五条の趣味をバカにするどころか、その才能に感心した海夢は、新しいコスプレ衣装を作るのを手伝ってほしいと、五条に頼み込みます。
その後に続く、二人の冒険と恋愛感情の高まりは、支え合うこと、他者を受け入れること、自己を受け入れること、の素晴らしい物語であり、さらにたくさんのハチャメチャな出来事が起こります。
『その着せ替え人形は恋をする』には不必要なファンサービスが多少あるため、当然ながら批判的な意見もありますが、五条と海夢の二人、そして彼らが途中で出会う他の多くのキャラクターは、「常に、自分のままであって良いし、好きなことをしても良い」という包括的なメッセージとともに、キャラの人格成長という重要な役割が与えられています。
記事JB
5 『チェンソーマン』
藤本 タツキ氏の大ヒットマンガ『チェンソーマン』の待望のアニメ化は、その期待に応えるだけでなく、むしろ多くの点で期待を上回り、昔からのファンにも新しい人にも、全体的にユニークな視聴体験をもたらし、ポップカルチャーにおける特異な位置を確立しています。
確かに『チェンソーマン』は、原作マンガでのアクション、流血、視聴者の頭を混乱させるほどの展開やどんでん返し、を実現させています。物語は、貧困にあえぐ青年が突然新しい力を得てデビルハンターになるというものですが、もちろん、それだけではありません。
見事なアニメーション、1話ごとに変わるエンドクレジット・シーンとエンディング曲、衝撃的な死、視聴者に常に突きつけられるモラルの問題など、すべてが組み合わさって、まるで2022年以降の少年アニメのあり方を再定義しているかのようです。
記事JB
4 『ぼっち・ざ・ろっく!』
有名な続編や有名な作品が目白押しで、すでに盛り上がりを見せていたこのシーズンにおいて、『ぼっち・ざ・ろっく!』は徐々に人気に火が付いた作品で、紙面上ではごくごく普通に聞こえるかもしれませんが、実行面では非常に成功しているストーリーで、何か特別なものを提供してくれました。
一貫して面白く、魅力的で、(おそらく痛々しいほど)親しみやすい「ぼっち」は、しばしば残酷にも思えるキャラクターコメディを見せますが、このシリーズの気取ったところが全くなく、特にその楽しい画風がもたらす純粋な喜びによって、上手いことバランスが取れていました。
さらに、この作品はある種の興味深いリアリズムを保つことに成功しています。視聴者は楽器を独学で覚えたり、バンド活動の経験はほとんどないかもしれませんが、多くの人が何らかの社会不安を抱えていたり、趣味をプロレベルに引き上げようとして壁にぶつかり自信喪失に苦しんだり、あるいは、趣味を通し友達を作ろうと、文字通り趣味関連グッズを身に纏い、他人からのアプローチをナイーブに必死で待っていたりと、いずれかを、人によっては3つすべてを経験しているはずです。
『ぼっち・ざ・ろっく!』は、『チェンソーマン』のような作品特有の「クールさ」には欠けるかもしれませんが、それを補って余りあるハートを持っています。
記事CG
3 『王様ランキング』
ウィットスタジオの『王様ランキング』は、その独特なキャラクターデザインで、当初は少し眉をひそめた人もいたかもしれませんが、すぐに明らかになるように、この作品はパンチを効かせることを目的とした物語ではありませんでした。メインキャラクターや物語全体の中でのプロットの展開を通して、ファンタジーやおとぎ話でよくある常識を覆すような形で、『王様ランキング』は、驚くほど洗練されたドラマと心に響くストーリーで、視聴者の記憶に深く刻み込まれることになりました。
もちろん、複雑でありながらリアリティ感のある個性的なキャストを揃え、魅力的なダイナミクスを実現した脚本もさることながら、『王様ランキング』の音楽も重要な役割を果たしました。特に、第1クールEDテーマ「Oz.」(by Yama)と第2クールOPテーマ「裸の勇者」(by Vaundy)は、作品のトーンを決定づけ、忘れがたい物語を形成し、激しい熱意の素晴らしい複雑な雰囲気を作り上げるのに貢献しました。
記事CG
2 『SPY×FAMILY』
遠藤 達哉氏の『SPY×FAMILY』が、アニメとメインストリームのポップカルチャーに与えた驚くべき影響は否定できません。アクション、政治的緊張、忍び寄る戦争の脅威、そしてそれらと日常的な冒険を織り交ぜた『SPY×FAMILY』は、激しく、スリリングで、コミカルで、ほのぼのとしていて、そのすべてが同じエピソードで表現されていることも多いのです。
黄昏と呼ばれる熟練スパイは、世界平和を左右する可能性のある最新の任務にあたり、ドノバン・デズモンドという謎の戦争主義者の情報を得るために、偽の家族を作ってイーデン校に潜入しなければなりません。結果として、フォージャー家が出来上がりましたが、ロイドは密かにスパイ、ヨルは密かに暗殺者、そして娘のアーニャは密かにテレパスとして、この家族は冒険とドタバタ活劇を一緒に繰り広げることになるのですが、その間、お互いへの純粋な愛と思いやりも育んでいきます。
中でも、アーニャは、最も愛されるアニメキャラクターの一人となっており、2022年のワールドカップでも目撃されたほどです。『SPY×FAMILY』は、遠藤氏の絶大なファンを持つ原作マンガに見合うアニメとして、その人気を高め続けています。
記事JB
1 『サイバーパンク エッジランナーズ』
『SPY×FAMILY』は商業的に主流のアニメかもしれませんが、品質や創造性の面で『サイバーパンク エッジランナーズ』に並ぶものは、今年はありませんでした。この作品は、非常に有名なビデオゲーム『サイバーパンク2077』をベースにしているにもかかわらず、非常に独自性の高い作品です。むしろ、ゲームベースの作品であるという事実が、ビデオゲームのアニメ化実績は全体的に低い事を考えると、この成功をより印象付けることになりました。
しかし、いくらビッグネームが元になっているとはいえ、『エッジランナーズ』の出来に疑問を持った人もいたかもしれません。また、既存のゲームタイトルに大きく依存したアニメを、ゲーマー以外の人が十分に評価することができないのではないかと心配した人もいたかもしれません。
しかし、アニメ制作会社トリガーのトレードマークである映像センスに、広大な世界観、リアルなキャストを加え、更にアクションと感情移入の両方を可能にするストーリーは、独創的で凶暴、かつワイルドなエンターテインメントとして、ゲームの経験がなくても存分に楽しめるシリーズに仕上がっています。
記事CG