『久保さん』は、『長瀞さん』と同じく、いたずら遊び好きな女の子が、新しくできたダンデレな友達を毎日学校でからかう話ですが、『長瀞さん』のようないじめ的な要素はありません。
2023年冬アニメに放送されてるラブコメアニメの新タイトル『久保さんは僕を許さない』は、かなりのライバルがいる作品です。
高校を舞台にしたラブコメ作品は非常に多いので、視聴者を引き込むには、それぞれ特有の視聴者への売りやユニークなストーリー展開が必要です。
本作の場合、『久保さん』は、からかい好きのデレデレ久保 渚咲(くぼ なぎさ)が、人に気づかれないほど存在感が薄い同級生、白石 純太(しらいし じゅんた)をついに見つけ、新しい友達としてからかい始めるという話です。
この面白さは、もう一つの人気高校生アニメに似ています。『イジらないで、長瀞さん』です。片方のアニメのファンであっても、別の片方のアニメも楽しめると思います。
ですが、ある意味、『久保さんは僕を許さない』は、『イジらないで、長瀞さん』に既に勝っており、それどころか、2023年冬のラブコメアニメを決定付ける存在になる可能性まであると思います。
久保 渚咲、イジワルにも自制心を見せる
『久保さんは僕を許さない』は、『古見さんは、コミュ症です。』とテーマ的に重なるところがあり、どちらも人懐っこい学生が、内気で人に誤解されるクラスメイトと心を通わせ、ラブコメ的なおふざけで日常生活をスタートさせる作品です。
久保 渚咲は、ダンデレな純太の周りにいるときは、ほとんど『古見さん』の只野 仁人(ただの ひとひと)の女性版といったところです。
しかし実のところ、『イジらないで、長瀞さん』のヒヤカスデレのスター、長瀞 早瀬(ながとろ はやせ)にも似ているのです。二人とも、男子をからかったり挑発したりして、次に何が起こるんだろうと、いろいろ試して楽しんでる女の子です。
長瀞は八王子 直人(はちおうじ なおと)の最大の敵であり、同時に親友でもあります。そして本作では、久保 渚咲は白石にとって主要な友人でありながら、好奇心のあまり彼をイジリたおしている存在でもあります。
久保も早瀬も本気で、純粋に愛情を表現するためにいじわるをしています。2人とも、自身の抑えきれない感情を処理するために必要なのでやっているのです。しかし、今のところ、『久保さんは僕を許さない』の方がうまくいっている感じです。
と言うのは、長瀞 早瀬と違って、久保は、より自制心を働かせ、純太をあまり追い込まないからです。彼女は、無害なおふざけで、クラスの中で彼を目立たせるのが楽しいだけなのです。例えば、授業中椅子の上に立たせたり、自分に向けられた先生の質問を純太に振って答えさせたりとかです。
純太は、久保がいつまで自分をもてあそぶのか不思議に思うのと同時に、久保が自分を「ペット」とさえ見ていることを知ります。しかし、久保は、純太を泣かせたり、叩いたり、持ち物を盗んだりすることはしません。
早瀬は、『イジらないで、長瀞さん』の序盤で、直人の頭を叩いたり、泣かせたり、スケッチブックを勝手に持ち出したりと、その過剰な行動でアニメやマンガのファンをやり過ぎではと心配させました。
また、彼女の友人である蒲生(がもう )、桜(さくら)、ヨッシーの前でも同様のことを行う事があり、早瀬の意図したとおり、早瀬のイジリに友人が乗っかかる展開になることがほとんどでした。
このようなイジリは実はいじめの矮小化にすぎず、長瀞 早瀬に自由を与え過ぎているのではないかという懸念がありました。つまり、彼女はラブコメの主人公だからプロットを進めるために何か面白いことをしなければならないから、多少やんちゃな事をしても仕方がないという考えに対して、それでもやり過ぎは良くないという懸念です。
『長瀞さん』のアニメは、現状、直人と早瀬の関係が安定し、バランスも良くなってきています。が、まだ正直、不安なファンもいるかもしれません。一方、『久保さん』の方は、渚咲がイジルことより、「~デレ」側に重きを置いているため、そのような問題はありません。
彼女は、只野 仁人と長瀞 早瀬の中間のような存在で、それがうまく機能しています。
長瀞 早瀬&久保 渚咲の心底にある隠された感情
長瀞 早瀬は、一見するとパンクで生まれつきのトラブルメーカーで、自分と正反対の男子に、たまたま恋をしてしまったという感じです。実はその逆で、早瀬は自分の気持ちをうまく処理できず、うまく表現できないからこそ、おちゃらけた行動をとってしまうのです。
彼女は、恥ずかしくて戸惑うかもしれないから、おふざけで補って片思いの相手に近づきつつ、緊張したエネルギーを発散して、直人には本心を透かさないようにしているのです。それが、彼女の考える妥協点なのです。つまり、可愛くクスッと笑ったりする恋する乙女といった外見を全く見せずに、大好きな「パイセン」の周りで過ごすという事が、です。
早瀬は、ヒヤカスデレのくせに、内心では傷つきやすく、他の女の子が直人と仲良くしていると、不安で身構えてしまいます。また、直人の前では照れくさいので悪ふざけをするのですが、それが裏目に出て自分に跳ね返ってくると打ちのめされた気分になります。
早瀬は、心の奥底では直人以上にダンデレで、自分は彼女として相手にされないのではと恐れているのかもしれません。それがキャラクターをより複雑にし、視聴者の共感を呼ぶのですが、『久保さんは僕を許さない』における渚咲にも同じことが言えるかもしれません。
久保が早瀬ほど過剰な行動をとらなかったとしても、彼女の穏やかな性格だけでは、人を引き付けるには不十分だったかもしれません。しかし、1話のあるシーンで、彼女にもっと深いところがある事が分かりました。
(渚咲が家で鼻歌まじりでニコニコしてたのを見てた)渚咲のかなり年上の姉が、渚咲が家で幸せそうに笑っていることが少ないことを暗に示していましたが、おそらく渚咲は学校で人気者でありながら、どこか満たされない気持ちを持っているのでしょう。
久保が直人の自分版として純太を友達とした今、彼女はずっと幸せそうで、いままでの寂しい気持ちもすぐに消えるかもしれません。久保は、長瀞のライトバージョンのような学校でのイジリ役だけでなく、明らかにそれ以上のものがあります。純太自身のように、久保も成長していくのでしょう。
『久保さんは僕を許さない』、『イジらないで、長瀞さん』はどちらもdアニメストアやU-NEXTで現在配信されています。
原作はAmebaマンガで読むことができます。