アメリカの災害を扱った映画と比べると、自然災害をテーマに据えたアニメは非常に少ないです。それはなぜでしょうか。
特に自然災害に関しては、何百本と存在するアメリカの災害映画と比べると、アニメ作品で自然災害を中心的に扱っているものは非常に少ないです。
確かにあるにはありますが、『東京マグニチュード8.0』や『日本沈没2020』のような災害モノは、他のアニメのジャンルと比べても極めて少ないです。その理由を説明します。
「自然災害」は扱いが難しいテーマ
日本は自然災害と無縁どころではありません。この小さな島国では、毎年1,500回の地震が発生していると推定されており、中には、大きなものもあれば、破壊的な規模のものもあります。
津波はそれほど多くはありませんが、通常、少なくとも年に1回は発生します。大規模災害が発生すると、同じような災害を描いたエピソードや作品がもしあった場合、通常、オンエアーが数日間延期されることになります。
映画ならまだしも、毎週放送の作品はスケジュールが決まっているので、このような遅れは作品側にとってかなりキツイものとなります。
また、アニメの収益の多くは、フィギュアやキャラクターCD、ぬいぐるみなどの関連グッズによってもたらされる傾向にあります。『東京マグニチュード8.0』や『日本沈没2020』のような作品では、それがなかなか難しいのです。
これらの作品では、萌え系の女子校生や美少年のように、特定の層にアピールするようなキャラクターの描かれ方やデザインにはなっていないし、マスコットのようなものは、作品のトーンや雰囲気にそぐわないので作られません。
このような作品が生み出すことのできる商品といえば、音楽アルバムや円盤(DVD、ブルーレイ)、ポスターや小説化といったものでしょうが、それくらいしかありません。
大破壊後の世界を描くにしても、アニメファンは、現実に沿った物語よりファンタジックな物語を好む
大破壊後の世界設定のアニメは数多くありますが、そのほとんどは現実的なものではなく、空想的な方法で発生します。例えば、エイリアンの侵略、異世界の衝突、あるいは昔からあるゾンビものなどです。
共通しているのは、現実と遠くかけ離れているという事で、地震や津波などを描いた作品と違い、放送遅延の影響を、基本的に全く受けません。
また、大破壊後の世界を描いた多くの良作品の精神はそのままにしつつも、やや非現実寄りにしているせいか、この種のストーリーはより好評を博す傾向にあるようです。
また、この手の作品は、災害が起きている最中よりも、災害が起きた後の主人公たちのサバイバルに焦点を当てることが多いようです。こうする事で、より大きな希望を感じさせてくれるのですーー 危険は去った、さあ、キャラたちはただ生き延びようとしているのだーーという具合にです。
『Dr.STONE』が最も良い例となるでしょう。『Dr.STONE』は、長い間、石にされていた主人公たちが目覚めた後の世界を描いた作品です。まだ、乗り越えるべき障害や危険は残ってはいますが、物語の主な目的は、差し迫った運命から逃れることではなく、石にされた全員を元に戻し、文明を再構築することにあります。
これは、欧米の災害映画によくあるようなプロットラインと比べると、より大きな希望に満ちたもので、その結果、作品自体もずっと明るいトーンになっています。この事は更に、より幅広いテーマが自由に設定できる事と、より多くの視聴者にアピールしやすくなる事に繋がり、市場価値を高めやすくしています。
リアルな災害を題材にしたアニメが増える可能性はゼロではありませんが、もし、それらの作品が『Dr.STONE』のようなアプローチを取らなかったとすれば、視聴者を確保する事は、非常に難しくなることは間違いありません。
『Dr.STONE』はdアニメストアやU-NEXTで現在配信されています。
原作はAmebaマンガで読むことができます。