『推しの子』のアニメとマンガのシリーズが大ヒットした理由は、理解できなくもありません。日本のエンターテインメント業界に関する興味深い洞察に満ちたストーリーが、スリリングなサスペンス・プロットに包まれているのです。この漫画は、高い評価を得ている2人の漫画家による作品です: 赤坂アカ(『かぐや姫の恋わずらい』)、横槍メンゴ(『クズの願い』)。赤坂氏は、『推しの子』がどのように生まれたのか、また、この漫画がどのように生まれたのかについて、独占インタビューに答えています。
マンガのプロットを練る際、お二人(赤坂アカと横槍メンゴ)はどの程度意見交換をしているのでしょうか。
赤坂アカ: メンゴ先生は『クズの願い』をヒットさせていますが、これは既存のストーリーや別の作家の脚本が元になっているわけではありません。僕がいなくても面白いマンガを書ける実力を持っています。ネタに詰まったときは、よくメンゴ先生に相談します。編集者とメンゴ先生とで食事に行ったりします。これは「準備会」と呼んでいますが、主に雑談です。基本的には、私の頭の中に物語の流れがあり、行き詰まったときに誰かに相談する、というイメージです。
- 1. 『推しの子』の制作は、これまでの漫画と比較していかがですか?
- 2. 「好きなアイドルの子供に生まれ変わる」という原案は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。
- 3. 第1章を描き始めたとき、物語全体のプロットはどの程度考えていたのでしょうか。
- 4. マンガの序盤は時間の流れが速いので、愛ちゃんや子どもたちを描く上で、どのようなことを意識されましたか?
- 5. お二人はどのような経緯で知り合い、このマンガで一緒に仕事をすることになったのでしょうか?
- 6. このマンガで描かれている芸能界について、どのようなリサーチをされたのでしょうか?
- 7. フィクションの作品で、アイドルの世界をここまでダークでドラマチックに描こうと思ったきっかけは何ですか?
- 8. 漫画の英語版では少し言葉遣いが違いますが、海外のファンもカナのことを「重曹ちゃん」と呼ぶ習慣があるようですね。国境を越えたこのジョークをどう思われますか?
『推しの子』の制作は、これまでの漫画と比較していかがですか?
赤坂アカ: 根本的に、自分は『推しの子』の流れを汲む作家だと考えています。かぐや様のコメディスタイルは、編集部の要望から生まれた特殊な方式に過ぎません。だから、僕にとってあのシリーズは、その特殊な公式から作られたものなんです。ただ、推しの子シリーズでは、読みやすくするために、かぐや様的なお笑いも入れています。
「好きなアイドルの子供に生まれ変わる」という原案は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。
赤坂アカ: アシスタントとマンガの作り方について議論しているときに、”強い欲望 “をベースにしたストーリーの作り方について議論していたんです。その時、アシスタントの一人と「アイドルの子供に生まれ変わりたい」という話になりました。これは日本では有名なジョークで、アイドルの結婚のニュースが流れたときにセットでツイートされることが多いです。私はそのアイデアを物語のアイデア帳に書き留めました。それからしばらくして、実写版かぐや様や新しいストリーマーの友人を通じて、芸能界に対する不平や不満を耳にすることが多くなってきたんです。このタイミングで芸能界を題材にした物語を作ろうと思い、あの時のアイデアが活かせることに気がつきました。
第1章を描き始めたとき、物語全体のプロットはどの程度考えていたのでしょうか。
赤坂アカ: 私の場合、第一幕と最終幕のプロットは決まっていました。そして、その間にどんなイベントを入れようかと考えました。日本のエンターテインメント漫画は、ドラマや映画、演劇、バラエティ番組などを題材にすることが多かった印象があります。しかし、現在、エンターテインメント業界は大きく変化しています。タレントがインターネットを無視できなくなり、YouTubeが超流行し、映画は字幕で見るようになり、演劇はアニメやマンガを題材にしたものが増え、リアリティショーがきっかけで自殺した例もあります。そこで、日本のエンターテインメントの現実の世界で起きていることを、現代的なテーマとして取り上げることにしました。それが最初のコンセプトでした。
マンガの序盤は時間の流れが速いので、愛ちゃんや子どもたちを描く上で、どのようなことを意識されましたか?
赤坂アカ: 原作では2巻、アニメでは2話からが本編になります。連載している雑誌が大人の読者をターゲットにしているので、物語の要所要所で大人の話であることを表記しています。
お二人はどのような経緯で知り合い、このマンガで一緒に仕事をすることになったのでしょうか?
赤坂アカ: 元々、メンゴ先生の才能を評価していました。そのことを話したら、共通の友人が会う機会を与えてくれたんです。だから、めんご先生の技術や才能は知っていました。『押しの子』の構想を練ったとき、あるメンゴ先生の作品に芸能界の話があったんです。それで、それを読んで、すぐにメンゴ先生に連絡することにしたんです。
新しいキャラクターをデザインする際のプロセスはどのようなものでしょうか?また、キャラクターの見た目で意見が分かれることはありませんでしたか?
赤坂アカ:メインキャラクターは、私が下絵を描いて、絵コンテ担当の女性に送ります。しかし、私が文章で細かい指示を出さなくても、メンゴ先生がキャラクター全体を描いてくれることもあります。時には、私がそのキャラクターを気に入って、登場回数を増やしていくような、双方向的なプロセスもあります。そういうキャラクター作りのスタイルが好きなんです。キャラクターデザインに問題があれば、議論して変えていきます。ただ、実際に変更したのは一度だけです。それは、実在の人物をモデルにしたキャラクターで、デザインがその人物に似すぎてしまったときです。『推しの子』は、プロットの中に実話の断片が使われていますが、ドキュメンタリーではありませんし、実在の人物を攻撃するつもりも絶対にありません。現在のエンターテインメント業界のトレンドやルールで起こりうる出来事を、ストーリーの中で脚色しているのです。この作品はフィクションです。
このマンガで描かれている芸能界について、どのようなリサーチをされたのでしょうか?
赤坂アカ: 『推しの子』の取材ラインはとても広いんです。トップタレント、地下アイドル、テレビ局関係者、本物のプロデューサー、マネージャー、ゴシップ誌編集者、YouTuber、脚本家など、さまざまな人から実話や私見を聞いて回ります。そこで見えてくるのは、パワーバランスやロジックに関することが多く、「AはBを軽く見ている、BはCを軽く見ている、CはAを軽く見ている」というように、特定の事情やルールで決めつけられる不満も結構あります。それを理解した上で仕事をしてもらえれば、タレントも周囲もストレスなく働けるのではないかと思うことがあります。アメリカと日本のエンターテインメント業界は、まったく違うと聞いたことがあります。今の日本の芸能界は、タレントや作家の組合がない、ギャランティがない、キャスティングでオーディションが軽視される、会社間のパワーバランスで機会が与えられる、基本的に事務所長には逆らえない…そういうことがあります。そして、それらは起こり続けています。アメリカの読者の皆さんも、このような日本独特の事情を知った上で『推しの子』を楽しんで読んでいただければ、この物語への理解が深まるのではないでしょうか?
フィクションの作品で、アイドルの世界をここまでダークでドラマチックに描こうと思ったきっかけは何ですか?
赤坂アカ: 映画公開の第一報の写真を見たファンが、キャストに襲いかかったという事例があったんです。その時は、その方はとてもタフな印象を受けたのですが、仲良くなってから「精神的にひどく傷ついた」と告白されたんです。それを知ったとき、タレントは作品のため、応援してくれるファンのために本性を隠しているのだと思いました。インターネットの普及で、ファンの声がダイレクトに届く社会になりました。若いタレントがいかに傷つき、搾取され、苦しんでいるのかを知ってほしいです。この作品は、そうしたタレントとどう向き合い、どう扱うべきかを問うている作品でもあると思うのです。現実を書いたら、自然と暗くなったというのが正解でしょうか。
漫画の英語版では少し言葉遣いが違いますが、海外のファンもカナのことを「重曹ちゃん」と呼ぶ習慣があるようですね。国境を越えたこのジョークをどう思われますか?
赤坂アカ:日本版発売当時も、「重曹ちゃん」という言葉がここまで浸透するとは思ってもみませんでした。十秒と重曹という日本語を使ったジョークを、アメリカの人たちがどう理解したのか、とても気になります。