AFP:AFP通信は1835年にパリで設立された、世界で最も歴史の長い国際通信社
R指定SFからティーン向けバイクアドベンチャーまで、配信プラットフォームは、エンターテインメント分野で最もホットで最も儲かるメディアの1つで覇権争いを激化させています。:そのメディアとはアニメです。
パンデミックの影響もあり、日本で生まれたアニメの人気は、Netflix、Disney+、Amazon Primeといったストリーミング大手にとって、金鉱と呼べるものでした。
Grand View Researchによると、2022年の世界のアニメ市場の規模は286億ドル(約4兆円/1ドル=138円換算)で、2030年にはその2倍の規模になると予測されています。
東京に本社を置くエンターテインメント・コンサルティング会社 GEM PartnersのCEOである梅津 文(うめず あや)氏は、AFPに「ピークはまだ先かもしれません。」と語りました。
「アニメをめぐる争奪戦がすぐに鈍化することはないと思われます。」とも。
業界専門サービスParrot Analyticsによると、世界的に、アニメの需要は2020年から2021年にかけて35%増加したそうです。
そのため、海外の配信サービス会社たちが、その関心の高まりに対応するために躍起になっているのも、当然と言えるのです。
近年、Disney+はアニメの分野では比較的後発組ですが、『鬼滅の刃』『SPY×FAMILY』『呪術廻戦』など、他の配信サービスでも見られるようなファンの多い作品を提供し始めています。
「人気作を持つことで、配信契約の解約を防ぐことができるのです。これらのアニメのIP(知的財産)がいかに強いかと言うことの裏付けにもなっています。」と梅津氏。
これらのタイトルを提供することは基本的なことであり、ますます多様化する選択肢の中でアニメファンの支持を得るには、それだけでは十分とは言えないと考えられます。
そのため、各配信会社は、コンテンツの独占的な権利を確保するか、独自のオリジナルアニメを共同制作することで、他社との差別化を図ろうとしています。
ー 市場を切り開く ー
昨年、Disney+は、大手出版社である講談社との利益性向上のための契約の一環として、大ヒットしたティーン向けバイクサーガ『東京リベンジャーズ』の第2期の独占配信権を得た事を発表しました。
Amazon Primeもまた、大ヒット作を「独占」しようとしてきたと、アニメ専門家の数土 直志(すどう ただし)氏は指摘します。 昨年、日本で最も興行収入を上げた映画『ワンピース FILM RED』もその一つです。
Netflixはこの市場で異端児のような存在であることを証明しました。既存のヒット作を引き抜くのではなく、アニメスタジオと直接仕事をし、相当量の創造的自由を与えて、全く新しい物語を創ろうとしたのです。
日本のアニメは、原作出版社、テレビ局、玩具メーカーなど、業界関係者で構成される「製作委員会」から生まれるのが伝統的な形です。
製作委員会は、キャラクターの商品化からゲーム化まで、作品から生まれる収益の可能性を広げるという重要な役割を担ってきました。
Netflixは、2018年に東京のアニメーションスタジオProduction I.Gと直接提携し、製作委員会システムを回避したことで業界に波風を立てました。
Production I.Gの石川 光久(いしかわ みつひさ)社長は、「(アニメ業界の)一部の人たちは、自分たちが長年築いてきたものを壊されると思い、怒っていました。」と語りました。
石川社長は、Netflixを「黒船」(19世紀のアメリカの船で、数百年にわたる鎖国を続けていた日本に開国を迫った)に例えるほどでした。
「日本国内のアニメの作り方が、いきなり強制的にオープンなものになった。」と彼は言います。
Netflixは、そのオリジナルコンテンツによって、「2021年に世界のアニメ需要を最も増加させたプラットフォーム」であると、米国Parrot Analytics社のChristofer Hamilton氏は述べています。
ー 実験的なひと押し ー
しかし、世界的に影響力のある配信会社の巨人たちであっても、日本での視聴者数は比較的少ないのが現実です。
特に出版社は、自社のマンガのアニメ化は、原作の露出を増やすためのものと考えているため、独占配信の契約によって日本での露出展開が制限されることを懸念しています。
ここで、独占配信を増やしたい配信プラットフォームと、(配信サービスを)できるだけ独占させたくない製作委員会のプレイヤー(原作サイド)の間で、「相反する2つの利害が衝突している」と、アニメ専門家の数土氏は指摘します。
専門家によると、この対立により、Netflixのオリジナル案件は、『鬼滅の刃』のような国民的な人気作品になりにくい作品をベースにすることが多いそうです。
GEM Partnersのシニアデータアナリストである伊藤 翔太(いとう しょうた)氏によると、2022年の日本ユーザーの視聴回数トップ20には、Netflixのオリジナルアニメは1つも入っていませんでした。
しかし、配信会社は、従来の市場ではニッチすぎると判断されるような商業的に難易度の高いプロジェクトに取り組みたいスタジオにとっては、魅力的な存在と言えます。
Netflixの初期のオリジナルコンテンツはこういった事を反映しており、数十年前のハードコアなSFアニメを彷彿とさせると批評家が言う作品が多かった印象です。
その中の一つが『DEVILMAN crybaby』です。この作品は、暴力とヌードを多用した「悪魔の少年」の物語でした。
Netflixのチーフアニメプロデューサーである櫻井 大樹(さくらい たいき)氏は、AFPの取材に対し、「私の感覚では、クリエイターは、既存のシステムではほとんどできなかったことを、私たちと一緒にやりたいと思ったのだと思います。」と語ります。
当初は 「実験的」ではありましたが、その後、コメディ、shonen向けの伝統的な少年モノ、テディベアを主人公にしたストップモーションのプロジェクトなど、幅広いラインナップを持つに至りました。
もちろん、長年のファンには、巨大なオンラインアニメ図書館ともいうべき、Crunchyrollをはじめとする専用サービスもあります。
Netflixのコンテンツディレクターである山野 裕史(やまの ゆうじ)氏は、市場が飽和状態には、まだまだならないと確信しており、競争によって「業界がさらにエキサイティングになる」だけだと考えています。
「世界的に見ても、アニメはもっと成長の余地があるとしか思えない。」