お約束事は、あらゆるタイプのフィクションでよく使われるものですが、アニメではどのようなものが多用されているのでしょうか?
ハイライト
・『HUNTER×HUNTER』や『鋼の錬金術師』などの作品に見られるように、アニメはしばしば、両親の死/不在のような描写を利用して悲劇を付け加え、登場人物の旅路に色を付け加えます。
・『ドラゴンボールZ』や『僕のヒーローアカデミア』のような少年アニメでは、攻撃する際、技名を大声で叫び、壮大な瞬間や記憶に残るキャッチフレーズを生み出しています。
・ティーンエイジャーの主人公はアニメにつきものであり、若い視聴者が共感しやすい一方で、大人のキャラクターは脇役や敵役に回ります。
本、映画、ゲーム、テレビ番組などでよく見られる「お約束」ですが、アニメも例外ではありません。
実際、長年にわたるアニメの人気と成長により、アニメには独自のお約束の集合体が存在し、あるものは他のものよりも断然多く使用されます。
アニメで、それほど使われないものもある一方で、いやというほど使い古されたものも確実に存在します。
ほとんどの主要なアニメ作品で使用されるのは、たいていドラマチックな演出やユーモラスな効果を狙ってのことであり、こうした手法が実際に効果を発揮するかどうかは、ひとえに視聴者一人ひとりの判断に委ねられるています。
10 両親の死、又は不在
若くてこれからというアニメの主人公がいる場合、かなりの高い確率で彼らには親がいません。幼い頃に親元を離れたか、悲劇的な死に別れをしていたりします。それらはたいていフラッシュバックを通して断片的に示されることが多いです。
この型は、視聴者の同情を誘い、登場人物に悲劇の重層を加える(あるいは、死んだと思われていた親や行方不明だった親が戻ってくるというサプライズ的プロットを入れる)ために盛り込まれます。
また、一方で、登場人物の物語が動き出し、冒険の旅に出るための起爆剤のような役割を果たすこともあります。
どのような理由であれ、アニメでこの型が重用されているのは確かで、『HUNTER×HUNTER』や『鋼の錬金術師』のような作品に見ることが出来ます。
9 攻撃技を叫ぶ
(現実の)戦闘のコツのひとつは、決して攻撃を相手に伝えないことです。もし攻撃の意図が相手に伝われば、相手は自分が何をしようとしているかを察知し、回避やカウンターを試みることができるからです。
しかしこれこそが、アニメの中で真のファイターなら誰でもやっていることです。つまり攻撃の際、技名をあらん限りの大声で叫びます。
これは、少年アニメのファンなら間違いなく誰でも知っている型であり、これを使っている作品を挙げろと言われれば、おそらく頭のてっぺんからかなりの数を挙げることができるでしょう。
『ドラゴンボールZ』、『NARUTO-ナルト-』、『僕のヒーローアカデミア』などが、この型を使用した作品例として挙げられるでしょう。キャラクターが自分自身と視聴者を、これから見せることになる素晴らしい攻撃に向けて興奮させるのです。
これなくして壮大な攻撃は完成しないし、視聴者が覚えてヒーローと同じく叫びたくなるようなキャッチーなフレーズも間違いなく生まれています。
8 10代の主人公
JRPGやアニメに共通するのは、主人公がまだ学校に通う年頃のティーンエイジャーであることです。若い彼らの肩に、主人公としての重荷がのしかかります。
そのため、大人のファンからは「無いわー」と呆れられるかもしれませんが、ティーンエイジャーの視聴者は、主人公に共感しやすく、おそらくそれが大きな理由でしょう。
大人のキャラクターは、サポート役や敵役として登場することもありますが、全人類を救うのはいつも、不運でありそうもない子供たちの集団です。しかし、多くのアニメがこの図式を利用しているのが現状です。
しかしもうそろそろ、ストレスの溜まったサラリーマンたちを解放し(子供たちに代わって主役を任せ)、通勤を邪魔している怪物に対して、鬱憤を晴らす時が来たのかもしれません。
7 フィラー・エピソード(話数稼ぎ回、又は溜め回)
フィラー・エピソードは、好き嫌いは別として、多くのメインストリーム・アニメに蔓延しており、1~3話、あるいはそれより多い数のフィラー・エピソードで話数を水増ししています。
ほとんどの人はこの言葉の意味を知っているでしょうが、そうでない人のために説明すると、フィラーエピソードとは、1話か数話に含まれる小さなミニ編のことで、本編全体とは何の関連性もない話のことです。
実践的には悪い慣習に聞こえるでしょうが、理論的には楽しくすることも可能で、例えば、ストイックなキャラクターを愉快な状況に置いたりすることができたりします。『ドラゴンボールZ』でピッコロが自動車教習所に通うところなどがいい例です。
ファンがフィラーエピソードについてどう感じようと、これがすぐに消えてなくなるということはなさそうです。
6 パワースケーリング(=パワーインフレ:ストーリーが進むにつれてキャラクターなどの戦闘力が際限なく強大化していく現象)
激しい感情、あるいは命がけの戦い–この2つが、このアニメの型である「パワースケーリング」が始まる最も一般的な条件です。
この型では、キャラクターは0から100になり、『モブサイコ100』の場合はまんま文字通りであり、戦いの流れを変えるために必要な力を得るものです。多くの場合、壮大なパワーアップと登場人物の叫び声が伴われるものの、何よりも安っぽくなるのが玉にきずです。
とはいえ、戦闘やパワーを持ったキャラクターが登場するアニメには必ず見られる不朽の型であり、今後も多くのアニメに登場する可能性が高いものと思われます。
5 ファンサービス(Hなシーン)
この型はファンサービスと呼ばれるにもかかわらず、ファンの間ではしばしば賛否両論があり、好きな作品にファンサービスが含まれることを楽しむ人もいれば、無意味でやや不快なため不要とする人もいます。
しかし、ファンサービスは大半のアニメ作品でほぼ不変のものであり、一部のファンが望むので提供されています。
すべてのファンサービスがHなシーン自体を目的としているわけではなく、中にはユーモアや皮肉の効果を狙っているものもあります。例えば、とんでもなく大げさなアニメ『競女!!!!!!!!』や、『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の悪名高いワンシーンなどです。
4 自己投影型主人公
異世界アニメや少女アニメでよく見られる型は、「白紙の状態」のキャラクターを視聴者に提示することです。つまり、ほとんど自我を持たず、穏やかな性格の人物で、視聴者がその人物に自分を投影できるようにするもので、『ペルソナ』などの人気ゲームシリーズにも見られる型です。
この型は、ファンがスクリーンの中に自分を見ることができ、主人公を通してアニメの世界を生きることができる一方で、RPGのように視聴者の好みに合わせて主人公の決断を形作ることができないため、あまりにも当たり障りのない主人公を持つことにしばしばつながります。
にもかかわらず、この型はアニメ全体で繰り返し使われており、今後も使われ続けるでしょう。アニメファンは、この型が、他の面で面白い物を持っているキャラクターに水を差さないことを願うしかありません。
3 恋の三角関係
恋の三角関係は、それ自体がポピュラーな表現で、欧米のメディアでもよく使われていますが、アニメも例外ではありません。
多くの少女アニメや、恋愛や群像劇をフィーチャーする作品は、ほとんどの場合、ある時点で三角関係をフィーチャーしています。
とはいえ、1人の登場人物と2人の恋愛対象が愛情をめぐって争うのだから、こうしたもつれをラブ・コーナー(ボクシングなどのリングのコーナー)と呼ぶ方が適切でしょう。
『ヴァンパイア騎士』、『フルーツバスケット』、『ピーチガール』などのアニメは、もし三角関係がなかったら平凡になってしまうであろう恋愛ストーリーに、ドラマ性を付加するのに役立っています。
ある種の競争を加えることは、どんな物語にも必要だとは思いますが、恋の三角関係は見ていて時にイライラさせるものであり、アニメのジャンルによっては使い古されていることも確かです。
2 友情の力
世界を救うのに一人では不十分ですか? だったら仲間を加え、不利な状況を一変させよう。みんなの不滅の絆の前には、どんな悪も敵わないのだから! これが友情の力という型の背景にある考え方で、例外もあるものの、若い視聴者向けのアニメでよく見られます。
それは視聴者に、人は一人ではできないこともあり、そんな時は助けを求めても大丈夫だ、という考えを強めるものです。
この考え方は、幼い子供たちの多感な心に浸みこませるには良い教訓であり、それがアニメで多用される理由かもしれません。
また、こういった考えの裏には、きちんとした理屈もあります。まず、数には力があるということ、そして見知らぬ人よりも、仲の良い見知った人の方が協力し合える可能性が高いということです。
1 可愛いアートスタイルに隠されたダークな秘密
ほとんどのアニメは、現実世界では自然に実現されないような強調された大きさの目やカラフルな髪をしたキャラクターなど、キュートなアートスタイルを特徴としています。
そしてこれらのアニメの中には、時おり、かわいいキャラクターが軽快な日常を繰り広げるという、少なくとも表面的にはそう見えるアニメがあります。
しかし、それらの作品を見る人は、物事が見かけ通りではない可能性があることを知っておくべきです。
このような痛々しいほど愛らしいアニメでよく使われるのは、光の裏に闇があり、視聴者が見続ければ、やがて隠された恐怖が見えてくるというものです。
最も悪名高いアニメのひとつが『がっこうぐらし!』で、主人公は、同級生たちが単に学校生活を楽しみ、課外活動に興じていると思い込んでいますが、実は、外の世界が崩壊した中、学校に引きこもっていただけなのでした。