思い浮かべてみてほしい。あなたが机に向かって、「縮約関係詞節」とは一体何なのかを、脳みそに無理矢理理解させようとしている間、隣の部屋では弟が最新の『呪術廻戦』のエピソードを見て人生を楽しんでいる姿を。
だから、日本では「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」のような本が出版されるのです。
英語学習教材といえば、日本では少しでも若者たちの学習意欲を高めるために、できるだけポップカルチャーを取り入れようとしているようです。(例えば、『ホロライブ』の英語教材があります。)
最新の試みは、『呪術廻戦』の教材を使った本です。この本を読めば、法助動詞を学ぶ代わりに、「Divergent Fist(逕庭拳(けいていけん))」の正しい発音を学ぶことができるというわけです。
正直なところ、最初「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」を買ったときは、私は半信半疑でした。「パチ、パチ、パチ」という効果音を学んだところで、英語学習者にとって有益な情報が得られるとは到底思えなかったからです。
この本では、平均的な英語学習者が使うことはまずないだろうと思われるランダムな事柄がいくつか取り上げられてはいますが、多くの良い点も含まれているように見えます。
アニメやマンガのようなものを使って外国語を学ぶのは、私は一般的には賛成できませんが、この本が発音を教えるのに良い仕事をしていることは認めざるを得ません。
東堂(とうどう)の「Boogie Woogie(不義遊戯)」から恵(めぐみ)の「Ten Shadows Techniques(十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ))」まで、呪術師たちの術式の正しい発音を読者に教えるのに、この本は驚くほどよくできています。
新しい言語を学ぶ人が通常苦労することのひとつは、単語のどこにストレスを置くかということです。これは、言語学習の難しい部分の一つで、長年の学習者でさえ苦労します。
その点、この本で英語を学べば、読者は術式の英語名と日本語の発音を知ることができ、強調される部分は太字で表示されます。
例えば、野薔薇(のばら)の術式「芻霊呪法(すうれいじゅほう):簪(かんざし)」は “StRAw Doll TechNIque: HAirpin”となります。
これは、読者が口語英語で単語がどのようにストレスされるかを感覚的に理解するのに役立ちます。良い先生の代わりにはならないかもしれませんが、悪くはないと思います。
この本には、本の中のページの1対1の翻訳も載っています。これは残念ながら、私が「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」で一番評価できない部分です。単語単位で1対1で説明するのではなく、フレーズ単位で説明しているからです。
私の考えでは、一語一語訳した上で、なぜそのように訳すことにしたのかを読者に示す方が、より有益だと考えます。この本のやり方だと、学習者が自分で(辞書等で)調べなければならないフレーズが出てくると思います。
私がこの本で一番気に入っているのは、「ヒント」のページです。これらのページには、学習者にとって実に役に立つ情報がランダムに書かれています。
私のお気に入りは、おそらくこの本の最初の「ヒント」です。このページでは「話し言葉」について説明されていて、短縮形にフォーカスしています。 例えば、”want to “を “wanna “に、”got to “を “gotta “に短縮します。
これは、外国語学習者として私が見てきて思うに、学校での授業で欠けているものです。学校では短縮形のようなことがテストに出ることはめったにないので、こういったことを学ぶ機会がほとんどありません。
しかし、「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」のような課外学習教材こそ、このようなことに最適なのです。
当たり前ですが、この本が英訳されることはないでしょう。ですが、この「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」は、逆に、日本語学習者たちが人気マンガを題材にした詳細な日本語学習書から恩恵を受ける可能性があることを示しています。
ただし、そのような教材は、中級から上級の学習者にしか勧められませんが。
「『呪術廻戦』で英語を学ぶ!」は、日本で販売されています。