やり過ぎなところもありますが、『かぐや様は告らせたい』は、最近のアニメの中で最もリアルな恋愛描写のひとつと言えましょう。
ハイライト
・『かぐや様』は、恋愛とは戦場であり、主人公たちは互いの気持ちを確かめ合うために激しい心理戦を繰り広げるという考えに基づいています。
・この作品は、思春期の不器用さと恥ずかしさ、そして人気のある学生たちにかかる期待とプレッシャーを捉えています。
・登場人物たちが互いの気持ちを確認するのに長い時間を要することから、本物のロマンスが発展するには時間と労力が必要であることが強調され、互いの気持ちが誤って伝わってしまう事がこの作品の重要な要素となっています。
最近のアニメで最も成功したラブコメのひとつといえば、赤坂 アカ（あかさか アカ）氏原作の『かぐや様』でしょう。
本作は大げさすぎることもありますが、互いに恋をしているけれど、どんなことがあっても相手に本心を見せない二人の高校生を主人公にしたアニメです。
この作品は日本ではもちろん、欧米の視聴者にも絶大な人気があり、成功の主な理由のひとつは、青春時代に湧きあがる恋の芽生えを、誇張やパロディをふんだんに盛りつつも、リアルに描いたところにあります。
では、本作は、思春期の恋愛のリアルな側面を、どのように描き出しているのでしょうか？
『かぐや様は告らせたい』はCrunchyrollで配信中です。
戦場
『かぐや様』は、主人公の四宮 かぐや（しのみや かぐや）と白銀 御行（しろがね みゆき）がそれぞれ、名門・秀知院学園の生徒会副会長と生徒会長であることから始まります。
二人とも相手に強い恋心を抱いているにもかかわらず、自分の気持ちを告白する前に、相手に告白させるという心理戦が展開されます。
作品第1話のイントロシーンでは、恋愛は至福の体験であると同時に、実は戦場であると説いています。当事者の間に無視することの出来ない力関係が生じ、必ずどちらかが 「勝者」（どちらかが「敗者」）になるというのです。
このような恋愛観が主人公コンビの脳裏に焼き付いている中、かぐやと御行は（自分に有利になるような）共通の話題を見つけようと奮闘します。
奮闘する中で、一方は複雑な駆け引きや心理戦などの策略を駆使して、相手から告白を引き出そうとし、もう一方はそうさせまいと自分の気持ちを必死に隠そうとします。
思春期
高校２年生（㊟原文では１年生となっているが誤り）である主人公たちはまだ16歳であり、その年齢で他人に恋愛感情を抱いたことのある人なら誰でも、その時期の不器用さを理解できるでしょう。
思春期の不器用さと恥ずかしさ、そして両キャラクターの強烈なプライドが、この作品のコメディの骨格となっています。
ある時、御行は、人に話せるような恋愛経験がないにもかかわらず、御行はそういうことに精通していると勘違いしている同級生に、恋愛相談を受けることになります。
学校内には、圧倒的な影響のある世論のようなものがあります。学校一の人気者であるかぐやと御行は、生徒たちから尊敬されているだけでなく、常に「うわさの的」にされているのです。
彼女たちはすでに 「（うわさの的にされる）アイテム」的存在になっているという考えが、彼女たちに常にのしかかるプレッシャーを生み出しています。
二人が、本心を見せないよう懸命に努力している一方で、他の生徒たちから二人が付き合ってるに違いないとの憶測からその進展について止むことの無い期待を受けていることが、二人の関係性の難解さを増大させているのです。
『かぐや様』をリアルにしているもう一つの点は、登場人物に対して視聴者が抱く親近感です。
他人の気持ちを読み解くことの難しさと、拒絶されるリスクを冒してまで告白する自信がないことに関しての描写を見れば、特に、親近感がわくことでしょう。
また、思春期の若者が「人並」とされる経験や、社会的に個人の一大イベントとされるものから遅れをとっていると感じた結果として経験する、大人への成長への焦りもあります。
全ての物事が恋愛で成功するように整えられているように見える、人気があり、才能があり、美しいと思われている人ですら、実はこうした要素で苦労しているものなのです。
誤解
恋愛アニメにおいて、コメディの道具として使われる頻度が高いのが、互いに誤解し合うことです。『かぐや様』でも、主人公たちの間にさらなる緊張感を生み出すために、この要素を多用しています。
（視聴者目線で）外から見れば、2人がお互いに想いを寄せているのは明らかなのですが、他の恋愛アニメと同様、『かぐや様』も最初からわかっていたことを確証させるまでに長い時間がかかります。
かぐやと御行が、生徒会活動を共にしていく中で、互いを想い合うようになっていったという事実は、 あるレベルでは、この作品が最もリアルに描いたもののひとつが、恋愛感情の芽生えであると言って良いでしょう。
と言うのも、本物のロマンスが花開くには、一緒に過ごす時間が、実際、たくさん必要だからです。
『かぐや様は告らせたい』はCrunchyrollで配信中です。
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