『ドラゴンボールZ』『呪術廻戦』『鬼滅の刃』は、いずれもアニメ(のストーリー)に準拠した映画がありますが、海外のファンにはこれが問題になっています。
少年マンガのアニメ化は、このメディアで最も人気のあるものの一つであり、このジャンルのビッグタイトルがアニメ映画化されることは驚くことではありません。
これらの作品の多くは、ほとんどが(マンガやアニメのストーリーとは直接関係のない)外伝的な位置づけであったため、映画はかなりの部分避ける事が出来たし、必ずしも見る必要もなかったのです。
しかし、この傾向はここ数年で変わってきています。そしてそのことは独自の問題を抱えています。
これらのアニメ映画は海外に届くまで時間がかかるものが多く、ストーリーを追いたい人には必見の本伝的存在です。
ひょっとすると、映画の内容を焼き直ししてテレビアニメとして放送・配信する可能性もあり、この場合映画を見たことが無駄になってしまいますが、今回はこの事は無視しましょう。
いずれにせよ、ストーリー準拠型のアニメ映画は、現在では大きな成功を収めているものの、解決策もあるものの、多くの問題点を抱えているのです。
ストーリー準拠型のアニメ映画は良くも悪くも必見です
アニメ映画が外伝から本伝的位置づけへと変化したのは、『ドラゴンボールZ 神と神』のような作品から始まりました。『ドラゴンボールZ 神と神』は以前の映画とは重要な部分で異なっていたのです。
それまでのドラゴンボールZ映画は、アニメやマンガのストーリーとは独立した外伝的作品であり、そのため本編の成功に便乗した、いわば単なる使い捨て的なストーリーでした。
しかし、『神と神』と『復活の「F」』では、映画のストーリーがアニメ本編にとっても重要なものになりました。これは、『呪術廻戦0』や『鬼滅の刃 無限列車編』のような他の作品の映画でも見られたことです。
そもそも、『呪術廻戦0』や『無限列車編』は、それぞれのマンガのそれぞれ該当する部分を映画化したものなので、ストーリーそのものなのです。
この問題が意味する事は、アニメと同じように、映画も見なければならないということです。日本での公開と同時に海外でも公開されるのであれば問題ないのですが、海外のオタクは、特に欧米では、映画が届くまで何ヶ月も待たなければなりません。
ドラゴンボールのように、アメリカで劇場公開される作品もありますが、これも日本での公開からかなり時間が経ってからのことです。しかも、アニメ映画はハリウッド映画に比べれば普及率は低く、劇場まで見に行くこと自体なかなか困難なのが現状です。
アメリカで劇場公開されない作品は、CrunchyrollやFunimationなどのプラットフォームで配信されるまで、ファンは数ヶ月から1年待たなければならないのです。
このため、映画のイベント等でネタバレを避けようとすることは愚の骨頂となりえます。特に、映画より先にアニメの新シーズンが欧米で配信される場合はさらに問題となります。
これらのアニメの中には、映画のストーリーをそのまま次のシーズンで焼き直し、再演しているものもあり、そのあとで映画を見ても、(ストーリーがほぼ同じなので)ただ冗長に感じさせ、ストーリー準拠の意味自体を疑わせることになります。
例を挙げると、『ドラゴンボール超』の序盤は、映画がすでに語っていたことをそのまま繰り返しただけでした。
劇場用ストーリー準拠アニメ映画は観客を一つにする
一方で、ファンがこうした劇場用映画を好むのには理由があります。それは、『神と神』や『無限列車編』は、アニメ本編と連動しているものの、幾分かは独立した作品であるという点です。
そのため、初めて見る人が仲間はずれにされることなく友達と一緒に見る事が出来るし、また、既存のファンももちろん楽しめる作品となっています。これは映画館で見るのがベストであり、家庭でストリーミング再生しても同じ体験はできません。
また、アニメ制作会社にとっては、ストリーミング配信やテレビ放映では得られない即効性のあるキャッシュが、これらの作品の興行収入によってもたらされるため、アニメ映画の制作が経済的な要因にもなっています。
特に日本では、ストリーミング配信の普及に伴い、物理的なメディア(BD/DVD円盤)の売り上げが減少しているため、なおさらです。海外の一部のファンにとっては不本意な状況ですが、これらの映画によって各作品のストーリーがこれまで以上に明らかになるのですから、誰が文句を言えるでしょうか?