ライトノベル『ゴクドーくん漫遊記』の作者である中村 うさぎ氏は、Real Soundとの最近のインタビューで、ライトノベルにおける異世界ジャンルの現状について懸念を表明しました。
主人公が強大な力を得てハーレムを形成することを主題とする異世界モノが蔓延し、同じような事の繰り返しでオリジナリティに欠けると主張したのです。
しかし、彼女の発言は、このジャンルの飽和状態に問題があるのか、作家の創造性の欠如に問題があるのか、議論を呼ぶことになりました。
現在のライトノベルの画一的な状況について尋ねると、うさぎ氏は成人男性向けエロ小説のコンクールで審査員を務めたときのことを話し出しました。
そのとき、「全部同じ人が書いたんじゃないかと思うくらい似通っていた」と感じたといいます。彼女は、ライトノベル、特に異世界のジャンルで同じような傾向が起きていると考えているようです。
異世界モノの場合、キャラが作品ごとに違う以外は、同じ定型的パターンが多用され、まるで一人の人間が書いたかのように見えることがあるというのです。
うさぎ氏の発言は、オンラインフォーラムで様々な反響を呼んでいます。ある人たちは、問題なのは異世界やハーレムに多用される定型パターンそのものではなく、このジャンルに浸透している強すぎる主人公のファンタジーであると主張します。
Mary Sue(メアリー・スー)(理想化されたオリジナルキャラクターを揶揄する語。)的キャラクターはうまく書けてるかもしれませんが、ほとんどの場合、キャラクターの成長や発展がなく、淡々とした面白みのない物語になるというのです。
しかしこれに対し、異世界ジャンルの過飽和状態は、視聴者が同じ定型パターンにきっと飽きる時がきて、新しいものに目を向けるようになるため、時間の経過とともに自然解消されるだろうから問題ないと反論する人もいます。
また、作家は常に自分が見たり読んだりしたものからインスピレーションを得ているので、まったく独創的ななものを作るという発想は、うさぎが言うほど広く浸透していないし、簡単にできるものでもないだろうという指摘もあります。
また、流行りのものを真似るという傾向は異世界ジャンルや文学に限ったことではないと指摘する意見もあります。
例えば、アニメやゲーム業界では、『北斗の拳』『機動戦士ガンダム』『美少女戦士セーラームーン』『ジョジョの奇妙な冒険』などの有名作品が、何年にもわたって模倣され翻案されてきました。
このような観点から、問題は異世界というジャンルに特化したものではなく、成功した作品を模倣するという、より広い文化的現象にあるのかもしれません。
異世界モノはつまらないという議論とは逆に、特にアニメにおいて顕著ですが、異世界ジャンルの人気は衰える気配がありません。実際、2021年にCrunchyrollで公開されたアニメの5本に1本が異世界ジャンルで、その成長と魅力が継続している事がうかがえます。
中村 うさぎ氏は、1991年から1999年まで全13巻にわたって刊行されたライトノベル『ゴクドーくん漫遊記』の著者です。この作品は後にアニメ化され、その成功をさらに確固たるものにしました。